「リトリート×仕事」を、社員全員でやってみた その②アンケート結果と、感覚共有

リトリート先で仕事をすることで、いつもとは違う頭の使い方ができるのではないか…?

という問いかけから始まった、株式会社Flucleの「リトリートと仕事は両立できるのか」シリーズ、いよいよ今回は社員全員でのリトリート体験レポート、後編です。

前編はこちら
「リトリート×仕事」を社員全員でやってみた その①4つのRと仕事の関係

リトリートとは、「隠居・避難」「隠れ家・避難所」の意味を持つ言葉です。またデジタル大辞泉には、「リトリートとは仕事や家庭などの日常生活を離れ、自分だけの時間や人間関係にひたる場所などを指す」とあります。

前記事では「4つのR」と、リトリートと仕事を掛け合わせる意味についてなど、行う意義と効果を俯瞰した書かせていただきました。そこで今回の記事では、視点を地べたに戻し、社内にフォーカスしてみたいと思います。

人は自由であればあるほど、シェアしたくなる

ここ数カ月、取締役・三田の無茶ぶりに振り回されつつも、リトリート×仕事を自ら実験することによってその効果を感じ始めている社員・本田は、行くたびにもやもやを持ち帰っていました。

それは、その体験を社内にどのように共有できるか、というもやもやです。

社内ライターでもある本田は、会社事業の発信業務を任されています。また、「可能性の芽を探してアレコレ試してみる」という遊軍のような動きも許されています。そのためリトリート×仕事のプロジェクトも、ひとりで計画を組み、勝手に行き、試行錯誤し、楽しみ、悩み、気付き、戻っては発信するという流れをひとりで行っていました。

これは本当にありがたいことで、もし「計画書出せ」「稟議通せ」「会議にかけてから日程決めろ」なんて言われたり、書き上げたものに口を出されていたら、全然面白くありません。

「私がどこに行っているか社内の誰も知らない」「私から連絡しない限り、コンタクトが無い」という我が社の極限の放置状態は、リトリート×仕事というちょっと不思議な体験を突き詰めに行くときの、必要不可欠でありながら一般的には得難い環境なのです。

リトリートから戻った私は、「戻ったよー」と社内チャットで報告します。それに対して特に熱いレスポンスはありません。「おつかれー!」「また教えてー!」という緩い返信があるのみで、具体的な報告は次の会議など、リアルで会う機会に行われます。

しかし本田は会議でも、リトリートという曖昧かつ神秘的な体験をロジカルにうまく説明することができません。そういうのがとても苦手なのです。だから「詳しくは記事にするわ!」と逃げて、体験を自分なりに咀嚼し、数週間かけて唸りながら会社ブログに落とし込むわけです。

そんな数カ月を過ごしながら、本田は「そろそろ社員全員で体験してみないとまずいな」と思っていました。ひとりだけが経験を積んでも、会社としては意味がないからです。ましてや「リトリート×仕事」の価値を皆でもっと掘り下げようとしたとき、チームメンバーが共通言語で語り合えないと進むものも進みません。

また、実はこうも思っていました。

「さみしい……」「共有したい……」

確かにリトリート×仕事は、ひとりで行うことで効果が高まります。しかしその時間の中にある、絶景とか、ひらめいたこととか、自分の変化とか…これすごい!という気持ちとかを、やっぱり誰かと共有したいのです。

そして、その気持ちを排除する必要はないのでは?とも思っていました。なぜならリトリートに仕事の要素を加える以上、時にチームで行うことは避けられなくなるからです。

5人で向かった「リトリート×仕事」

と言うわけで。決して私のさみしさが伝わったせいではないと思いますが、とにかく今回のリトリート×仕事は全員で行くことになったのでした。

しかし、ここでも恐ろしいのは、行き先・内容・スケジュールが私に丸投げされたということです。多少の経費をかけて全員で行くにも関わらず、です。「どこに行くのか気にならないの!?行きたい場所とかないの!?」とも思いましたが、何しろ社内でリトリートに関する知見を一番持っているのは私ですから、「とにかくお願いね」という雰囲気でした。

今なら分かります。皆、どうしていいかさっぱり分かっていなかったのです。それくらいリトリートは、未体験者にとっては謎めいていて具体的に想像ができないことなのです。だから一回も行ったことがない状態でどうこう言っても仕方ないし、(準備面倒だし)、ついていくわ!と任されたのです。

次に行くときは、あれこれ注文が出たり、効果に対するもっとシビアな意見が出るでしょう。(きっとうるさいほどに!)

とは言え、私にとっても、複数人で行くチームリトリートの組み立てや効果測定について考えることができたことは、大きな収穫でした。

アンケートに書かれた社員の率直な意見

当日のお寺に到着してからのスケジュールは

10:00 本堂にて住職のお話を聞く
11:00 住職も交えたミーティング
12:00 昼食
13:00 ヒトリートタイム(誰とも会話せず、作業もせず、自分と向き合う「ひとりのリトリート」)
14:00 アウトプットタイム(仕事、読書など、何か脳を使う作業をひとりでする時間)
15:00 振り返りミーティング
16:00 終了

というものでした。肝となるのは13:00~15:00の、ひとりになる時間です。たった2時間でどのような感覚が得られるか、また何に気付き、何をするか。そしてチームで行き、各自違う行動をすることがどのような効果をもたらすか。

内容をダラダラ書いても仕方ありませんから、ここからは事後アンケートから、皆の意見を抜粋します。

出発前に、リトリート×仕事に期待していたことは何ですか?

・自分の気持ちを落ち着けること、仕事に集中できること、未来の計画について考えられること
・以前の記事に「五感が研ぎ澄まされる感覚」とあったので、五感が鋭くなることを期待していました
・リトリート前後の、パフォーマンスの違い。発想着想の違い

13:00からのヒトリートタイムは、何をしていましたか?

・ひたすら山道を上に登っていった。ある程度行ったところで座って休憩し、景色を眺めた。下りは目を薄めに開いて歩き禅を実践した。最後は神社にお参りした。社内メンバーがどこにいるかが気になって最初の方は集中できなかった。途中から音に集中できるようになり他の感覚が少し薄くなった。座って集中したかったが座る場所がみつからずうろうろした。(座ろうとしたらアリがいっぱい来た。服装的に汚い場所にも座りづらい。蚊帳とかテントみたいなのが欲しい)最後の下りのときは目をつぶったので、足の裏の感覚が鋭くなった。日向と日陰の温度差が気持ち良かった。肌で感じることができた

・散歩。最初は自分がリトリート状態にたどり着けているのか…という自問自答を繰り返していましたが、次第に周囲の景色や音、香りなどに注意を向けられていることに、ふと気付きました。電子機器を一切見てはいけないということに関しては違和感がなく、むしろ気にしなくていいということに心地よさを感じながら1時間を過ごせました

・山の下の川(温泉の入り口)まで散歩
・境内に座ってしだれ桜の葉の揺れるのをみていた。風の流れを見ていた

14:00からのアウトプットタイムは、何をしていましたか?

・経営計画についてメモを取っていた、ヒトリートで感じたことをまとめていた
・頭に浮かんだ単語をノートに書きつけていた
・読書
・提案書の作成

14:00からのアウトプットタイムで、いつもと違う感覚があったら教えてください

・最近は不安な気持ちになることが多かったが、リラックスした状態で冷静に計画を組むことができた。集中状態はまあまあと言ったところ。虫が多くてそこに集中を取られた
・気が散らない。考えが煮詰まってからの発想力のスピード感が増す。屋内でやってしまったので外に出ればよかった
・日頃は周囲の音が気になるのですが、自然の音や風があっても読書に集中できた気がします
・集中力と発想力が普段より増した感覚があった

時間配分について(足りた・足りなかった)

・全体的には足りなかった
・山の古寺という環境のおかげで思ったよりリトリート状態には早く入れた。集中するための時間は日帰りでも2時間は必要
・せっかくヒトリートで集中できる状態になれたので、作業時間が長ければもっとはかどる気がしました

リトリート先で仕事をするために必要なものは?

・時間が分からないので、何か鐘の音のようなものがあるといい
・デスクと椅子、虫のいない静かな環境
・見晴らしがよい環境でPCが使えること
・縁側などで読書・瞑想するために使える座布団
・自分自身がリトリート状態にたどり着くのに最適な環境を見つけること
・事前に具体的にどのような作業をするか決めておくこと

その他の意見もろもろ

・作業はアウトプット系がいい。まとめる系・作業系だとあまりメリットがない気がする
・デジタル機器は触らなかった。遮断を強制してもいいかも
・限られた時間なのでヒトリートが不完全だった、どのような状態になれば正解なのかも分からなかった
・やり方やヒントなどの簡単なレクチャーが必要

いかがでしょう。集中というキーワードが多く出たのは予想通りでしたが、ヒトリートの時間にほぼ全員が「歩く」ことを選択したのは驚きでした。確かに自然の中を歩くことは思索に向いていますが、もっと静かな瞑想的なことを求めるのではないか?と勝手に想像していたからです。

また「時間が足りなかった」という意見が多かったのは、狙い通りでした。今回はあくまで日帰りのショートプログラム。「もっとやりたい」と感じるくらいがベスト、と思っていたからです。

出さなきゃ入らないし、行ったら帰らなくてはならない

リトリート×仕事の経験を重ねるにつれて、仕事でのパフォーマンスを上げるためには、とにかく出すことが必要であると実感します。

状態を整えるために「出す」ことは、日常でも当たり前に行われています。

PCの動きが悪くなったら、データやファイルを削除する。
厄年が来たら、厄払いをして悪いものを追い払う。
体が重くなったら、便秘を解消してスッキリさせる。
風邪を引いたら鼻水やセキでウイルスを外に出す。

これは自然の摂理です。まずは出さないと、入れたいものを入れることができません。不要なもので容量がいっぱいになり、動きが悪くなっている状態では、よいアウトプットなど不可能です。

しかし、自分の状態が悪いとうっすら認識しているのに「何かが足りない」「あれを追加したら良くなるはず」と、無駄なインプットを繰り返す病にかかっている人が多すぎます。

リトリート×仕事では、何もしない時間を作り、自分の中の空き容量を増やします。

それは軽やかに仕事をするためのチューンナップでもあり、最高の状態でアウトプットをする気持ち良さを知ることで、翌日からの仕事がもっと楽しくなるプラスのサイクルを作る仕組みでもあります。

この「翌日の仕事」というのは結構なキーワードで、現代のリトリートは行ったら帰って来ないといけませんし、行っている時間だけ充実していても、意味がないのです。どんなに隠遁生活に憧れても、西行や芭蕉にはそうそうなれませんから。

たしかにリトリートには「隠遁」という意味もありますが、リトリート×仕事はある意味、社会からの隠遁とは真逆の状態を目指しています。

人の脳が正常に働き、考えること・生み出すことに快感を覚え、それを翌日から自分の生業(なりわい)に充分に還元できる。

これが、「リトリート×仕事」の真髄ではないかと思うのです。

社員全員リトリート まとめ

リトリート×仕事プロジェクトに関して放置放任されており、社内から興味を持ってもらえていないのではないか…と危惧していた本田ですが、やはり一度体験すると意見要望その他もろもろが出るようで、「また行こう」という流れができ上りつつあります。

今回の社員全員リトリートでは、本田は案内人という役割に徹したため、自分の意識変化や効果についての検証が思うようにできませんでした。しかし「ヒトリート」と「チームリトリート」の違いや課題が明確になり、リトリートについての感覚を社内で共有できるようになったことは大きな収穫です。

またこの連載を、ちゃんと社内メンバーが読んでくれていることも知っています。皆ツンデレなので、表立って褒めたりできないのでしょう。いまだに私が「ねえねえ!読んでくれた!?」と聞いて初めて、レスポンスがあるような状態ですが、何度もリトリート×仕事の体験をするうちに皆がもっとはまっていくのは、目に見えています。

「チーム間でもう少しコミュニケーションが取りたい」と思っているマネージャーの皆さん。
リトリート×仕事には、目に見える関係構築ツールは使われません。お酒も入りませんし、無理やりの自己開示も不要です。何ならお互いが会話を交わさなくてもいいくらいです。

しかしリトリート×仕事でできる感覚共有は、今までの表面的な「仲良し感」を凌駕します。

恐らくそれは「リトリートで自分が知った感覚を、他のメンバーも知っていると感じるだけで、深い部分での認知共有ができ安心する」と言うことなのではないかな、と思っています。

「安心して所属できるコミュニティ」
それを作り上げるためには、感覚の共有ができていることが前提となる。
チームリトリートの核心は、そこにあるでしょう。

 

お読みいただきありがとうございました。実は、本田は既に次の「リトリート×仕事」の準備に取り掛かっております。引き続きお読みいただけると幸いです。

関連記事

  1. リトリートと仕事は両立できるのか その②準備編

  2. リトリートと仕事は両立できるのか ~プロローグ~

  3. その会議、会議室でやる必要ありますか? ~リトリート会議のすすめ~

  4. リトリートと仕事は両立できるのか その④変化

  5. 「リトリート×仕事」を、社員全員でやってみた  その①「4つのR」と、…

  6. リトリート×仕事で、めっちゃ遠くまで行ってみた その②働くって、なに?…