みんみん蝉と、990枚のふせん ベンチャーは自然の中で合宿をした方がいい理由【2019秋編】

2019年、つまり令和元年も、あと100日を切りました。はたらく大人の皆さま、年初にうっすらと胸に浮かべた今年の抱負、その進捗はいかがでしょうか。

さてGWに経営合宿を行ってからはや4ヶ月。株式会社Flucleでは「秋の経営合宿」が行われました。

前回の様子は以下記事からお読みください。

今回も、行き先は春と同じ。大阪府北部の有名な某滝の近くです。

命の危険を感じるような暑い夏をなんとか乗り切ったといえ、9月中旬というのに気温は30℃超え。「秋っぽい」と思い込みもうとすれば、ギリギリ自分をだませる程度の風が、春と同じ青もみじを揺らしています。

下界ではさすがに聞こえなくなった蝉の鳴き声が、いまだ耳に響きます。

この4か月間で初夏から初秋へと変わった季節。しかし弊社のサービスフェーズは、季節以上に変化していました。「走りながら考えるしかない」小さなベンチャーの「32時間の記録」、今回も広報担当・本田が書かせていただきます。

 

「あるある」のほとんどは、失敗の原因

2019年2月1日に新サービスをリリースしてから、約7カ月。エントリーサービスである「HRbase 就業規則」は、あれよあれよのうちに400社以上の登録・ご利用をいただき、ユーザーの期待に応えるべく毎日小さな改善を繰り返してきました。

しかし課題は山積み。必要なのに手つかずのタスク、検証しないと本格的に進められないアイデア、「そろそろ決めたいね」といいながら話す時間の取れていないサービスの未来…

合宿が終わってみて、改めて実感できます。

個々のタスクが雪だるま式に増えていく中、どうしても目先の「今やること」「すぐに直すこと」から取り掛からざるを得なくなり、「よくわからんけど突っ走るしかない!」という危険な状態が目前まで迫っていた…と。

これはベンチャーあるあるなのでしょうが、「あるあるー!」ってだけで終わっては、いけないのです。だって、将来飲みながら語られる「あるある」は、失敗の原因として語られることがほとんどだから。

そう考えると、サービスリリースから4カ月目での経営合宿は、やるべき時期に、やるべくして行われた、最良のアクションだったといえるでしょう。

 

 

5月と9月の「やるべきこと」の変化

2019年、9月某日。

木漏れ日というには控えめすぎる、木々の受け止めきれない陽光がさんさんと差し込む中、テーブルの上には大量のふせんが積まれました。

1日目のテーマは「私たちは、どのような社会課題を解決できるのか」です。

GWの合宿では「①メンバーの価値観のすり合わせ」と「②カスタマージャーニーの作成」が行われ、その結果、以下のような効果を実感できていました。

①お互いのヒストリーと価値観を知り、認め合うことで、コミュニケーション上の齟齬が減った
②リモートで働く全員が、顔を合わせなくても、同じ目的に沿って日々の決断ができるようになった

上記はこの4カ月にとって、とても大きな効果をもらたしました。サービスを「どのようなターゲットに向けて開発するか」を全員で考え、皆がバラバラな方向に「勝手な道しるべ」を打たないようにできたからです。

しかし、それはやはり5月の段階で必要だった課題に過ぎません。
そこから4カ月後を経た今は、もう少し先まで視野を広げておく必要があります。

そのうえでの「私たちは、どのような社会課題を解決できるのか」というブレストは、なかなか白熱しました。さすがに6名も集まれば文殊の知恵の2倍ですから、なるほどー!というアイデアがどんどん出てきます。

「ふせん、ちょうだい」
「私にも」
「あと1分ねー」

窓の外からは、9月のみんみん蝉。
みーんみんみんみん。

山には100均なんてない

途中で小休止をはさみながら、ときにコーヒーを飲みながら、ブレストは19時まで行われました。

ここで誰かが気付きます。

「ふせん、足りる…?」

用意したふせんは、110枚入りを9パック。そう、朝10時の段階では990枚のふせんが私たちの手元にあったのですが、そこから8時間を経て冷静になってみると、なんだか明日の分が心もとない…

「明日も、朝9時から17時まで、ふせん使いまくるよね?」

しかし、おなかも減って、ビールも飲みたい私たちのソリューションはただひとつ。

「諦める!」

ふせんがなくなったら、もみじの葉っぱに書けばいいのです。山には100円均一もコンビニもありませんから。

毎回、自然の中の経営合宿で知るのは、「仕事したのに、疲れていない」という不思議な感覚。もちろん長丁場のアイデア出しですから、疲れはあります。しかしそれはいつもと違う脳の筋肉を使ったことによる高揚感を含んだ、心地よい疲労です。

その状態に染みる、キンキンに冷えたビール。
私たちの胃袋の要求に完全に応える、美味しい料理。

合宿って、意外といいもんです。

(余談ですが、食事の始まりとともに、代表・三田が「先に食べといて」と席を外しました。帰還まで推定約40分。待つこともできます。できますが、たとえ社長であろうとも、この料理を前に誰が40分も待つでしょうか。「皆で飲もうね」と買った箕面ビールにだけは手を付けず、缶ビールで我慢するという最上の判断で、三田不在のまま宴を始めたことを、ここに記録しておきます)

 

 

強制的なデジタルデトックス環境が生む、非日常時間

「ベンチャーは自然の中で合宿をした方がいい」理由は、夜にも存在します。

Wi-Fi環境が不完全なので、もう誰もPCなど立ち上げません。
都会では飲み会中も気になるスマホも、部屋に置きっぱなし。

強制的なデジタルデトックスは、密なコミュニケーションの時間を生み出します。

日頃からわりと仲が良い方だと感じている社内ですが、それでも出てくる知らない話。「コミュニケーション」という使い古された言葉でくくってしまうと味気なく感じますが、会話の邪魔をする電波や忖度を一切排除しているおかげか、非日常感があります。

最高に贅沢な環境の中で、記事化できないバカ話に興じる男性陣

満を持して囲炉裏端に登場した箕面ビール

コミュニケーションの問題はどの組織にもあると思いますが、チーム間の理解を深める「場」は時代によって変化しています。

かつて企業が保養所を持ち、親睦旅行でコミュニケーションを取っていた時代はもう昔。平成世代に「浴衣で大広間に集まってビールを注ぎ合い、一発芸を披露していた」などというと退職されてしまうでしょうが、それが「一番効率よかった」時代でもあったわけで、一概に否定はできません。

また、少し前まで情報交換と親睦の場であった喫煙所も同様です。

そもそも、そのような「場」自体は消えてしまいましたが、コミュニケーションの必要性は減っていません。むしろ増えています。

会社に集う人々に多様性が生まれ、顔を合わせる機会が減った以上、それなりに「相互理解」ができる機会を持たねばチームビルディングなど不可能だからです。

みんみん蝉は鳴きやみ、窓の外からはカラコロという虫の音が聴こえる、9月の夜。持ち込んだ日本酒が2本空になるまで、宴は続きました。

 

ベンチャーの醍醐味と恐ろしさ、700枚消費されたふせん

翌日も晴天。朝食を食べたあとは、さっそく午前中のディスカッションが始まります。

1日目に出た、「解決したい社会課題」「顧客のペイン」をどんどん深堀りしていきます。そして、検証するために手を付けていた新しいサービスアイデアが、果たして本当に必要なのかを探る作業を繰り返します。

ベンチャーがすごいのは、全員が「正解をわかっていない」ところでしょう。誰ひとり、今やっている事業の先がどうなるかを知らず、成功体験もなく、そして全員がまったく初めての役割に取り組まざるを得ないのです。

多少のメソッドはある。
こうしたらいいという先人の足跡をなぞることも可能。
実際それを頼りに進むしかない。

とはいえ、ゼロからのサービス、エキサイティングな体験の連続です。

ただし、既存サービスを販売することに、我々の存在価値はありません。そして単に「儲かる市場」に突っ込んでいくためだけに、やっているのでもありません。

実際、昨今のマーケットの変化はめまぐるしく、ちょっとしたアイデアが大きなお金になる瞬間をたくさん目にします。しかしその熱狂が一回りしたときに何が残るのかをイメージできないと、社会課題の解決策など提示できません。

地に足の着いたミッションに地道に向き合いつつ、スピードを失っては「終わってしまう」という過酷なテック業界で、ただ単に「生き残り」を目指すのではなく、何を成し遂げるか…

みたいなことを、ひたすらひたすら、ふせんにアイデアを書き、研ぎ澄ませていきます。

ランチタイムの段階で、残りのふせんは約300枚。

24時間で、約700枚ものふせんに、何らかの「アイデア」が書き出されたことになります。

BGMは、相変わらずのみんみん蝉。
みーんみんみんみん。

疲れを飛ばすのは、カフェインと白い錠剤

2日目のお昼ともなると、会議も佳境。そもそも予定していた議題は、少しずつ後ろにずれ込んでいます。あとは時間との戦い。17時までに、なんらかのまとめをしなくてはいけません。

あっという間の昼食タイム

ラストスパートに向けて、緑の中で一息

とはいえ、合宿スタートから24時間以上経過していますから、さすがに午後の時間は疲れを感じます。そんなとき役に立つのは、コーヒーと、頭をスッキリさせる白い錠剤。これが本当に恐ろしいほど効くわけです。

長丁場の合宿の必須アイテム

また、おやつタイムに昨夜の残りのおつまみやスナックをあけると、ひっきりなしに手が伸びました。肉体疲労はありませんが、脳が糖分・塩分をめちゃくちゃ求めている感覚が分かります。15:00に食べるおかきの塩っ気が、あんなに美味しく感じることは、そうそうないでしょう。

 

テンションの上がらないサービスは出さない、という結論

2日間でさまざまなブレスト、ディスカッションを行いましたが、ひとつ象徴的なことがありました。

取り掛かりはじめていたサービスについて「どうするか」という議題が出たのですが、大量のふせんマップのどこにも「すとん」と落ちないのです。

ニーズがあるのも分かりますし、すでに結構な時間も費やしています。しかし実装するのか?というと、どうもしっくりこない。こういうときは「やったほうがいい」「やめたほうがいい」と意見が二分することも多くあるのですが、今回はどうも、誰かが主張するというよりは、皆の中で「やろう」という熱い気持ちが湧ききっていないのでは?…という状況でした。

「どうも、テンションが上がらない」

本田も、こう感じていました。もちろん「やろう」となったらやるしかないでしょうが、これ、ワクワクする?

結果、三田が「皆のテンションが上がらないサービスは、やる意味がない」という結論を下し、開発は塩漬けとなりました。

このときは深く考えず、「そうだよね!」と場は進みましたが、今になってみると、その価値観での判断はとてもよかったといい切れます。なぜなら合宿後に三田によってまとめられたサービスの全体図が、とてもスマートで、分かりやすく、魅力的になったからです。

時間をかけて全員がアイデアを出し合い、遠い未来の世界観から、手元のサービスに至るまで、余すところなくマップ化する。その過程で自然共有された「こうしよう」という価値観にしたがって、サービス全体図に入れるべきピースを選んでいく工程があれば、「あれ?はまらないね」という発見が容易になります。

これは、単なるディスカッションでは見つからないはずです。下界での会議であったら、恐らく「売れるかどうか」「いくらかかるか」などの現実的な事象に決断が引きずられ、誰かが「もやもや」したとしても言語化しにくく、見切り発車でのスタートとなる可能性が高いでしょう。

32時間に及ぶ経営合宿で得た成果はまだまだありますが、「テンションの上がらないサービスは出さない」という価値観を共有できたのは、意外と大きな収穫であるように感じました。

最後のまとめ

17時、会議が終わった段階で、残ったふせんは100枚弱。

足りた、足りました!

脳内を洗い出し、可視化し、まとめ、判断をくだすサポートをしてくれた約900枚のふせん。
「足りるか…」とヒヤヒヤさせてくれたふせん。本当にありがとう!

ふせんがなかったら、経営会議は成り立たず、サービスは瓦解し、ケンカが始まっていたかもしれません。

まとめ

ベンチャーで走りながら仕事をしていると、正直、ジャッジしきれない情報が多すぎるんです。

「こうしたらいい」というアドバイス、「儲かりそう」なお誘い、「売れそう」なサービスアイデア、「みんなこうしてる」という心揺れる話。

人間、どう進んでいいか見えないときは、安易な道を選びがち。それはある程度仕方ありませんし、ジャンクな情報の中には光るものがあるはずです。だからアンテナは張るべきですが…

じゃあ何かを選ぼうとしたときの、「最後の判断基準は、どこ?」

これが明確ではないと、チーム間の価値観共有など、口先だけで終わってしまうでしょう。

だからこそ、経営合宿で、

・自社のサービスを世の中に重ね合わせるための「地図」
・不要な情報に惑わされない、同じ価値観で進める「チーム」

 

をつくることを、おすすめしたいのです。

そして、「自然の中で、ふせんと模造紙は買い足せない!」という、株式会社Flucleが体得したノウハウを、どうぞ活用してください。

ふせんは、1000枚以上、必要です!

 

 

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